点滴や胃ろうなどの方と比べたら、お口で食事を摂っている方のほうが口腔内が汚れやすいと思われるかもしれませんが、それは大きな誤解です。逆に、お口で食事を摂っていない方のほうが、口腔内が汚れやすく口腔内環境が悪化しているケースが多いのです。
食事をしていなくても、お口の中には粘膜の老廃物や痰などが溜まります。また、食事をしないことでだ液の量が減り、より細菌が増加しやすい環境になるため、誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクは高まってしまうのです。
口腔ケアは誰にとっても重要なものですが、特にお口で食事を摂っていない方は入念に取り組む必要があります。高齢者に多い誤嚥性肺炎を防ぐためにも、口腔内のケアはきちんとおこないましょう。
上述のとおり、点滴や胃ろうなどの経管栄養をされている方にとって口腔ケアはとても重要なものです。また、経管栄養から通常の食事に戻ろうとされる方にとっても、口腔ケアは欠かせません。
経管栄養で過ごされている患者様は、ふつうに食べることが難しくなっているため、食事を再開する前には食べる訓練が必要になります。しかしその訓練も、悪化した口腔内環境でおこなっては意味がありません。訓練をおこなう前に、まずは適切な歯科治療と口腔ケアを受けて口腔内環境を整えることが大切です。
口腔内のケアには、歯科衛生士による「プロフェッショナルケア」と、看護師や介護士がおこなう「簡易ケア」があります。
週1回~月2回程度、歯科衛生士がおこなう専門的なケアがプロフェッショナルケアです。おもに以下のことを目的としています。
- 虫歯や歯周病の診察
- 誤嚥性肺炎の予防や口腔内と全身の状態に適した口腔清掃
- 日頃のケアだけでは落とし切れていない歯の汚れの専門的な除去
- 口腔機能の維持・回復を図るためのリハビリテーション・機能的口腔ケア
- 日頃のケアについてのアドバイス
- 食介護への支援 など
看護師・介護士が毎日おこなうケアが簡易ケアです。以下のことを目的としています。
- 口腔内を清潔に保ち細菌数を減らす
- 口腔内の自浄作用を正常に維持する
口腔ケアは、誤嚥性肺炎をはじめとする口腔内および全身のさまざまな疾患の予防に効果的です。毎日の簡易ケアと、プロフェッショナルケアの両方を欠かさないようにしましょう。